病院におけるリスクマネジメントとは医療安全を管理すること、リスクマネージャー(安全管理責任者)は、医療に伴うリスク(危険)管理を行う者に対する総称です。医療の高度化、複雑化に伴い現場では、様々なリスクが存在します。しかし、人間は完璧ではありません。
「人間はミスを犯す者である」ことを前提に、個人では防止しきれない問題を組織全体の問題としてとらえ、組織的、系統的に対策を講じていかなければなりません。リスクマネージャーは、この活動の中心となるものです。
当院では、平成13年4月より専任リスクマネージャーを設置しています。
①リスクの把握 (現状の把握)
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②リスクの分析 (原因の分析)
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③リスクへの対応(対策の立案)
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④対応の評価 (対策の実施と有効性の評価)
というプロセスで行われます。
まず、取り組みの第一段階として、リスクの把握(事故につながりかねない「ヒヤリ・ハット」した出来事を収集すること)が必要です。これは、医療の現場でどのような危険、事故につながる可能性が潜んでいるかを知ることです。この情報を収集する手段として、当院では「ヒヤリ・ハット報告」を実施しています。
ヒヤリ・ハット報告システムは、コンピューター入力システム(ファイルメーカー)を使用しています。
報告者は、事例体験日から3日以内に体験日、体験時間、所属、経験年数、配属年数、ヒヤリ・ハット分類、事例の内容、未然に防止できた理由、体験により得た教訓を入力し、専任リスクマネージャーに送信します。
専任リスクマネージャーは、報告内容の状況を把握するとともに、集積データとして、事例のキーワード、患者関連要因、医療従事者関連要因、医療システム関係要因、フィードバック先の分類、事例の重要度・緊急度等の情報を管理します。その後、報告に対するコメント、部署での事例検討の必要性の有無を記して、職域リスクマネージャーへ100%フィードバックしています。
職域リスクマネージャーは、専任リスクマネージャーからフィードバックされた検討依頼書をもとに、スタッフへの情報提供と事例検討を実施します。4M(人的要因、環境要因、設備的要因、管理的要因)、RCM分析などを行い、事例の発生した要因を分析しています。
フィードバックから2週間以内に事例検討が行われ、改善策が立案されます。また、検討内容・改善策は「職域検討報告書」として専任リスクマネージャーに提出されます。改善策は院内全体に係わるものと、医療現場での対応とに分けて立案します。
立案された改善策を実行し、それが有効であるかを確認します。対策の評価は医療安全推進部会が中心となって行い、有効な対策はマニュアルに活かします。また、その対策が有効でないと判断した場合は、新たな対策を立案していきます。