医療関係者の方

採用情報

サイト内検索

ドクターインタビュー

堀 直人 / 外科・診療部部長

成長を続け、常に「今がピーク」と言える医師でありたい

大腸がんは罹患率の高いがんでありながら、手術により治癒が見込めるがんでもあります。とはいえ、がんなんだと思うだけで患者さんの不安が増大するため、「治療に際しては病気や治療の現状を知ってもらい、少しでも安心してほしい」と外科医の堀直人先生は話します。日ごろどんな思いで治療に臨み、患者さんに接しているのか、詳しいところを伺いました。

消化器のがんを手術で治す仕事に興味を抱き、外科の道へ

親戚に医師がいた影響だと思いますが、子どものころから漠然と、人生の選択肢の1つとして医師という職業を考えていました。強く意識するようになったのは中学生のころ、祖父をがんで亡くしてからです。祖父は1年くらいの転帰で急に亡くなったので、「人の命って、こんなに簡単になくなってしまうものなのか」と感じました。それ以来、「病気と向き合う仕事に携わってみたい、医師になりたい」そう考えるようになりました。

医学部に入学する前に関心があったのは緩和医療でしたが、大学に入学して病院実習に参加してみると、解剖という地図を頭に浮かべながら手術を見学するのが楽しかったですし、体を動かすことが性に合っていると感じたことから外科を専門的にやっていきたいと思いました。消化器がんの治療では、がんを取り除いた後で残ったところをつなぐことも必要で、そこは呼吸器などの臓器にはない特徴です。このような再建を伴う手術を含め、取り組む甲斐のある領域だと感じて消化器外科に進みました。


大腸がんは罹患率が高いが切除すれば比較的治りやすく、化学療法も進歩している

7505544fa74be7bf9f073c3f6c732fdf-1708997354.jpg

私が医学部で学んだころと現在では、がんの勢力図はかなり変わっています。喫煙者の減少により肺がんが減り、ピロリ菌の除菌治療が広まったことで胃がんも減ってきました。ウイルス性肝炎の治療が進み、肝臓がんも少なくなりつつあります。その一方で、ゆるやかに増加傾向にあるのが大腸がんです。罹患数が最も多い疾患は男性が前立腺がん、女性が乳がんですが、総数では大腸がんとなっています。

大腸がんは出血や腹痛を契機に見つかることもありますが、無症状の方もかなり多いです。皆さんにお願いしたいのは、便潜血検査を定期的に受けることです。毎年受けていれば絶対に大丈夫とは言い切れないものの、それでも受けていない人に比べれば早期発見の可能性が高くなります。

大腸がんが他の消化器がんと違うのは、“手術ありき”で、切除できるところを切除すれば比較的治りやすいことです。一昔前よりも小さな傷で合併症の少ない手術ができるようになっています。

また、抗がん剤などによる薬物療法が比較的効きやすいのも大腸がんの特性と言えます。薬物療法は手術の前後に行うことが多いので、当院での大腸がんの薬物療法は私たち外科が主導して行っています。生存率が比較的高い大腸がんも、ステージ4になると予後が悪くなりますが、最近は薬物療法でうまく治療できるケースも出てきています。例えば、あるステージ4の患者さんは、がんの組織検査から4%程度の人しか当てはまらないMSI-H陽性というタイプであることが分かり、免疫チェックポイント阻害薬という新しい薬物療法を行いました。その薬が大腸癌で使えるようになった早い時期に適応する患者さんに対して高い効果を発揮し、がんを消すことができました。治療後にその方からお礼のお手紙をいただいたときは、「本当にうまくいってよかった」とうれしくて、やりがいを感じましたね。今ではその薬も当たり前に使われるようになり、薬物療法が大きく進歩していることを実感します。


2024年より、結腸がんへのロボット支援下手術がスタート

当院の泌尿器科では手術支援ロボットを用いた手術が行われてきましたが、2024年からは外科でも結腸がんの手術にこの機器を導入する運びとなりました。当面は直腸を除くS状結腸までの結腸がんが対象で、手術を受ける患者さんにとっては治療法の選択肢が増えることになります。まずは結腸がんへのロボット支援下手術を軌道に乗せ、若手医師にもしっかり継承させるよう努めていくつもりです。

ありがたいことに、当院には医師個人の特性や得意分野を生かそうとする雰囲気や、「これをやりたい」と声を上げやすい風土があります。大規模病院では医師個人の希望は通りにくいようですが、今回のロボット支援下手術の導入しかり、ある程度は希望したことを前向きに検討してもらえます。そこは職場風土に感謝していますし、上司にも恵まれていると思っています。


医療の質を保つために、最新情報を積極的に学ぶ労力は惜しまない

当院に来る前、都市部の大病院も地方の小さな病院も経験し、その中で医療格差を感じました。地方は医師が少なく、医療機関を受診する機会、医療の量や質など、都市部との差がみられます。私は、地方で生活していても都市部の大病院と同様に受ける医療の質を担保できるよう、学会や研究会に積極的に参加して最新の情報を得るように努めています。最近はコロナ禍を機にデジタルコンテンツが増え、遠方で行われる講演もオンラインで視聴できるようになりました。その意味では、医師のやる気次第で提供できる医療に差が出てくるのではないでしょうか。可能な限り医療の質を保てるように、学び続ける姿勢は大事にしていきたいですね。


医師として常に「今がピーク」であるために成長を続けたい

私が以前勤めていた病院の60歳を超えている先生に、「外科医のピークはいつですか?」と聞いたことがありました。するとその先生は、「今がピークだ」とおっしゃったんです。体力や視力、スムーズに体を動かす能力などのピークは30代くらいですから、年を重ねると身体的に厳しくなってきます。ですから、昔の外科医は60歳くらいで最前線から離れる傾向でした。ところが今では、手術支援ロボットなどの技術の進歩により長時間の手術も高い精度でより安全な手術がおこなえるようになりました。そうやって今後は、外科医としての寿命は伸びるのではないかと言われています。

しかも外科は奥が深くて、解剖的な知識や困った時のトラブルシューティングなどは経験によるところが非常に大きくなります。医師の“引き出し”は年々増やせるわけです。 スポーツは運動神経がいい人ほどうまくできますが、手術はそうとは限りません。ある程度は知識や経験で補うことができます。

今のところ、自分の中では 1年前よりも進歩している手応えがあるので、そう感じる間は外科医として成長できるだろうと思っています。何歳までできるか分かりませんが、「医師として、今が1番のピークだ」と常に言い続けることができるように研鑽していきたい。それが私の目指す理想の医師像ですね。


堀 直人 ほり なおと
 / 外科・診療部部長

広島県三原市出身。体を動かすことが好きで、休日は大学から始めたテニスを主に楽しんでいる。その他に天気の良い日はサイクリング、冬にはスノーボードも嗜む。

春のサイクリングにて

患者さんとの信頼関係を築き、苦痛の少ない内視鏡検査を

相見 正史 医師

何でも気軽に相談できる身近な医師でありたい

宗田 大二郎 医師

「やりたいこと」から「求められること」へ 地域のオールラウンダ...

懸樋 英一 医師

pagetop